なんでも USB

おさしん

 USB 扇風機が登場して 「USB から電源だけ頂戴する」 というある意味とんでもない使い方が普及して久しいですが、その結果、恩恵としてかなりの機器が USB からの充電でまかなわれています。
 これで何がよいか? というと、旅行などの時に持ち歩く物が、AC アダプタを全部のデバイス分もって行く必要がなくなるということです。結構使いまわせますし、違うものでも数種類+変換コネクタを持っていくだけで充電できます。
 って、そこ 「そんな当たり前の事をいまさら偉そうに書くなっ」 とかいわない。知らない人もいるかもしれないので、直接質問をもらった機会にちょっと話題として書いてるだけですので。ご存知の方には、残念ながら今回は面白い話題はありません。
 さて、私の周りで USB で充電してるものは次のとおり(一部)。

 USB 電源の供給もとは、勿論 NotePC ですが、これに加えてダイヤッテックの USB を出力できる小さな AC アダプタ(スイッチング電源)も持参しています。
 携帯が 2 つあるのは、片方はお仕事用のものです。京ぽんについてはもとから 「USB 充電」 なのであたりまえですねw 
 デジカメ、PDA は、コネクタ形状が EIAJ 極性統一区分 #2 というもので、共通の形状・極性(センタープラス)です。携帯電話の FOMA については、3G の規格上、コネクタ形状や電気的特性が規定されていますので、キャリア、機種を問わず使用できます。
 問題は、V602SH ですが、ご存知のとおり PDC は機種(正確にはメーカー)ごとにコネクタ形状が変えてあり統一ではありません。ただ、これは安全上の問題と若干の電圧差異があるためで、概ね一緒であるため、少なくともここ最近の機種に限っては、共用してもほぼ問題ありません。

どんな物が使用できる?

 基本的な話として 「なんでそもそも USB から充電できるの?」 というお話しです。「何でもかんでも、AC アダプタの物が USB で充電できるの?」 というと、そうではありません。
 まず、条件として 「デバイス側の要求電圧が 5V(±10〜15%)かつ 500mA 以内」 です。裏を返せば、これさえ満たしていれば、適合するプラグさえあればどんな物でも充電できます*1。逆に、これを満たしていないとプラグの形状が合っても使用できません。
 この条件の根拠になるのが 「USB の出力している電圧が 5V であり、規格上 500mA 以内である事」 が目安とされているからです。なので、電圧はともかく、アンペアについていえば、多少オーバーしていても 「理論上は」 使用できる 「場合」 もあります(電圧が異なる場合は使用できる 「場合」 は基本的にないと思った方がいいです)。
 その 「場合」 というのは、あくまで500mA 以上を供給できる必要が M/B に求められているだけなので、メーカーの設計によって実際どこまで供給できるかは異なってくるからです。あるメーカーは 500mA きっちりだったのに、あるメーカーは 1000mA でも余裕で供給できたりします。実際どこまで供給できるかは、調べてみないと分かりません。なので、あまりわからない人は 500mA までだと思っておいた方がいいです。
 逆に、デバイス側がどれくらいを必要としているかは、マニュアルを見るか、または、参考までに附属の AC アダプタの裏面を見てみましょう。そこにはその AC アダプタの規格がかかれています。「INPUT:100-240V~1.2A 50/60Hz 50W」 とか書かれてるかもしれません。これは、この AC アダプタが、コンセントに要求するスペックですので無視して構いません*2。デバイス側に必要なのは 「OUTPUT」 の方です。ここに 「12.0V 3.0A」 などとかかれていたりします。これは、デバイス(携帯なりデジカメなり)に供給する電圧が 12V であり、最大 3A を供給できますよ、という意味です。
 この例だと、12V なので残念ながら USB 充電とは無縁の世界になります。もし、ここに 「5V」 または 4.9 とか5.5 などの近い数字が書かれていれば動作する可能性が高くなります。なお、5V からどれくらい離れていても大丈夫か? については、そのデバイスの設計マージンによりますのでわかりません。メーカーに聞いても 「純正の AC アダプタ以外は使わないでください」 といわれて電話を切られるのが落ちです。参考として、慣習上は±10% です。表示が 5V より高い場合にはデバイスが動かないだけで済みますが、低い場合は壊してしまったりするのでつながない方がよいでしょう。
 次に、アンペアです。もしここに 「5A」 とか 「15A」 などとかかれていたら、ほぼ間違いなく使えません。場合によっては、動作はするが充電はできないとか、再生はできるが撮影はできないなど、機能限定で動く「場合」もあります…が動かさない方がよいでしょう。500mA 以上の場合は、それだけ 「冒険」 だと思ってください。
 最期の難関が、プラグの形、つまり、デバイス本体につなぐ時のプラグ形状です。携帯電話などは、USB からつなぐコードがどこでも市販されてるので問題はないでしょう。デジカメについては、FujiFilmFinePix シリーズについてはほとんど 「EIAJ」 の#2 という規格プラグをつかってるので、これまた、市販で USB コードが沢山売ってるので、問題はありません。もちろん、京ぽんのように接続側が USB の mini-B だったりした場合には何の心配も要りません。しかし、形状や大きさが違う場合には、残念ながら自作するしかありません。
 自作をする場合には、秋葉の電気街のようにパーツを扱っているお店があれば、そこで容易に入手できるので変換プラグ (EIAJ#2 →デバイスのプラグ) の既製品があれば、それを、なければプラグとコードを買ってきて自作することになります。ただ、この場合にはハンダゴテが使えないと無理なので、そういう経験がなく、挑戦する気もない人は諦めましょう…。

「自己責任」というリスク

 自己責任という言葉はテレビではやるずいぶん前から、PDS とか自作の世界では長いこと使われた元から有名な定型句でした。例えばこの、USB 充電も完全に自己責任です。まずないとは思いますが、USB 充電をした結果壊れたら保障期間ないでも有料修理ですし、メーカーは下手をすると、修理すら断る事があります。USB 充電ケーブルのメーカーや PC メーカー、もしくは紹介した私やお店の人も、当然責任はとりません。もっとも、先述の適合条件にあってるものをつかっている限り、まずそれが原因で故障することはありません。ただ、少しずれてる物や、何らかの相性によって、チャレンジしてみたところ合わなくて故障する可能性はあるわけで、それはやっぱり、リスクです。
 ところで、どうしてリスクがあるのでしょう? まず、電圧が高い場合。4V の物に 5V を入れたら、物によっては耐圧を超えて部品が破壊されて、二度と使えなくなる事があります。電圧が高すぎるので、風船が破裂するような物ですね。逆に、低い場合。これは少々複雑で、大抵の場合は先述のように 「動かない」「一部機能が使えない」 だけで済む場合もありますが、場合によっては中途半端に電圧が供給されていることで、動作と不動作の境界線をさまよい、それによって動作不良を起し、例えば、メモリーされていたものが消えてしまったり、リセットしないと動かない 「ハングアップ状態」 になってしまう可能性があります。ただ、この場合、機械自体が物理的に壊れることはあまりないので、再起不能になることはないかもしれません。
 次に電流 (A) です。こちらに関しては、電圧と違って 「デバイスの要求するのが 50mA なのに、USB が 500mA」 でも全く問題がありません。高くても低くてもいけない電圧に比べて、電流はデバイスが要求する値が 「低い分には問題ない」 のです。例えとしては全く変ですが、コピー用紙に例えれば、電圧は A4 とか A3 とかの用紙の大きさです。指定された大きさ以外のものは使えません。電流は、枚数です。50枚使う、といわれたのに 100枚準備があっても問題ありません。50枚だけが使われるだけです。
 ところで、電流が 500mA を超えていたらどうなるのでしょう? 先ほど書いたように、マザーボードや USB 出力のある AC アダプタがいったい何 A まで供給できるかは調べないと分かりません。M/B に関しては、調べてもわからないかもしれません。
 なので、ここでは話を分かりやすくするために、規格ギリギリの500mAまでしか出せないと仮定してみましょう。これは、マザーボードの USB からとるか、それとも AC アダプタやセルフパワー USB ハブからとるかによって多少異なりますが、大まかにいうと、足りない電圧を取り出そうとすると、次のような事が起こります。
 まず、通常、コンセントから来る電気は交流です。これは、「〜」みたいな波の形をしています。一方、コンピュータ系の電子機器で使用するのは基本的に、直流です。「−」 のような形をしています。乾電池から取り出す電池も、直流ですよね。なので、コンセントから来る 「〜」 を 「−」 に直してあげる必要があるわけです。
 直すという事は、要は加工するわけです。イメージとしては、小人さんが、でこぼこになったトタン屋根のような波型の鉄板を、金槌で叩いて平らに…みたいな感じでしょうか。小人さんは、送られてきた鉄板を、次々平らにして、渡してくれます。当然、小人さんの能力にも限界があります。あまりに急いで 「早く次の鉄板! 次!」 とあわてて催促して作らせると、小人さんのお仕事も粗くなってしまいます。どうしても追いつかなくなり、でこぼこが多少残ったままで鉄板を送り出してしまいます(というよりは 「あー、まだ終わってないよ」 と言ってるのに、作業中の鉄板を途中で無理やり持っていかれる感じw)。
 でこぼこが残った鉄板を、まっすぐな鉄板しか通らないスロットに通そうとしたら、どうなるでしょう。あまりにひどければ、当然、詰まって故障してしまいます。ただ、もっと厄介なのが、中途半端に平らになっている鉄板です。一応通るので、見た目問題ないように見えますが…実は、本来綺麗に平らでなければいけないのに残っていたでこぼこが機械の中を傷つけてしまって、少しずつ、壊していってしまっています。すぐに壊れることはないとしても、そのうち故障するか、少なくとも、機械の寿命が縮まることは間違いありません。また、本来まっすぐである事を前提として作られる 「作品」 がゆがんでしまったりもします(ラジオなら、ノイズが乗る、みたいな感じですね)。
 つまり 「1530mA 必要な機械だけど、USB から電源をとっても動いたよ」 と喜んでいると、そのうちデバイスが壊れてしまう可能性もあるわけです。「動いてるんだし、大丈夫なんでしょ」 というわけにはいかないのが、怖いところです。これと同じ現象が、一昔前にたまに、高い純正の AC アダプタを買わず、他のメーカーの AC アダプタや安売りされてる物を 「電圧とコネクタが一緒だから使える」 と流用して使って、NotePC や PDA なんかを壊してしまう人で見る事ができました。
 同時に、PC や AC アダプタの中の 「小人さん」 にも無茶をさせてるわけですから、当然こちらもおかしくなってしまう事があります。大抵は何重にも安全回路が作られているので大丈夫でしょうが、最悪、煙を吹いてしまったり、中の小人さんが壊れて、5V の出力のはずが 50V くらい出力されて、一瞬でデバイスを壊してしまう可能性すら、否定できません。まぁ、PC の USB ポートではそういうことは起きないでしょうが、セルフパワーの USB ハブや USB 出力のある AC アダプタでは特に気をつけた方がよいです。
 余談ですが 「じゃぁ、PC に普通に USB 機器をつなぐときも、一つのデバイスの上限が USB の規格上 500mA まで許されてるのなら、何台もつなげる USB の特性上、合計が電流上限を越えてないか、計算しなきゃいけないの? 100mA一台、3mA一台・・・」 と思うかもしれません。実は、そういった事が起こらないように、通常はデバイスが 「ボクは 1000mA を要求するよ」 と申告したりします。その結果、つながれたデバイスの電流の合計を越すと、OS や BIOS に 「供給できる合計を超えてますので減らしてください」 と、電流を遮断されてしまう事があります。
 ただこれは、あくまで申告によるものです。当然、ここに書いたような USB を電源としてだけ使う場合には、OS からも BIOS からも全く見えません。どのくらい電流を使うかどころではなく、つながれてるかどうかすら、気がつかないわけです。一応、BIOS や物理的なヒューズで、能力以上の電流を取り出されないようにと安全策をとってある場合もありますが、普及版の廉価なものではそうでないものもある可能性があるので、注意が必要です。USB につなぐものは、本来 USB の規格に乗っ取った物でなくてはならず、当然、USB を電源としてだけこっそり使うのは、もってのほかなわけです。ある意味アウトローな使い方をする以上、責任は全部自分にかかってくるので、気をつけましょう。
 というわけで、あくまで自己責任ですが、これらに気をつければかなり快適に色々なものを USB からの電源供給でシンプルに使う事ができたりします。よほど無茶をしない限りそうそう問題になった話も聞かないので、デジカメや携帯などの 「このも電子機器」 に限って、身の回りの機械の電気的特性などを調べてみてはいかがでしょう? 意外と旅行や通勤の荷物が減るかも?

*1:一般的な民生器具の話。安定化特性などの条件を満たす必要のあるものを除く

*2:これって海外でも使えるの? という疑問を持った場合、ここで 115V とか 100V とかかれていた場合には国内または同一環境用、~240V などと書かれてるものは海外が対応の可能性が高いと思っていいです