東京物語

 Clusterさんの日記に東京についての話題があったので、書いてみたり。本当は、日記にコメントする形で書いてたんだけど、あまりにも長くなったので自分の日記に書いてみました。というわけで、長いのダメな人は読まない事を強くオススメします。
(→続き)
 日本全国をまたにかける、やり手の SE の Cluster さんw 東京におけるコメントがあったので、一応東京生まれの東京育ち(not江戸) でたぶん中では一番東京歴の長い?の私がコメントをしてみたり。
 私は Cluster さんとは逆で、東京から全く出てません。一応、大学入ってから約 6 年(途中、学部と doctor で飛び級してます)、アメリカのシアトルに住んでいましたが、日本国内同士で比べるのとはまた違うでしょうし、そういう意味で事実上東京のみです。
 私も、地方の知り合いとかの話の中でよく 「東京は狭い」 と言われますが、不思議なことに、私は住んでいるからか狭いと思ったことはありません。確かに、田舎の方の住宅情報とか見ると100坪の土地とかが標準割り当てくらいの認識だったりして、数値の上ではびっくりしますが、それはあくまで知識上の話で、感覚的には分かりません。建て変わる前の私の実家は、中央線沿線/都区内で駅から5分未満という立地なのに80坪くらいあって 「すごい広い」 と言われていましたが、地方から見ると…何それ状態でしょう。しかし、狭いと思ったことは一度もありません。不思議ですw
 とは言っても、私が今年の春まで住んでいた渋谷区は、私から見てもとてもごちゃごちゃして見えます。古くて狭い家が、人が一人か二人しか通れないような路地とともに沢山建っていたりします。正直言って、新宿区、渋谷区は再開発住宅地域以外お勧めしません。これは、私も住むところじゃないと思ってます。幸い、私が住んでいたのはその中でも比較的区割りの大きい地域で、ある意味恵まれた場所でしたが…。
 実感がないという意味では、似たような話に "東京の空気は汚い" というのがあると思います。住んでる人間から見ると、(少なくとも私は) 幹線道路沿いの国道の歩道でも歩かない限り実感は全くといっていいほどありません。社会科の授業で散々大気汚染のグラフを見せられているので、数値上の事実としては知っていますが、実感はないのです。同じく、犯罪についても…。
 次に、Clusterさんの指摘する 「エリア」 の話は、おそらく 「パーソナルスペース」 の話だと思いますが、これって、東京は狭い方なんでしょうかね〜。わかりません。多少立ち席がある程度の電車で、時々、目の前 40cm くらいのところに来る人がいたりしますが、これはかなり迷惑です。私は比較的神経質な方なので、「警戒エリア」 は広いほうでしょうから、あまり参考にならないかもしれませんね。
 ただ、肩がぶつかって謝らないのは、マナーの問題でしょう。これは、エリアが近い・狭いじゃなくて、実際にぶつかってるので謝らないのは悪いことです。少なくとも、私が謝らない (謝ろうとしない) 事はありません。
 その一方で 「謝ること」 には問題もあります。ぶつかった時に双方は移動してるわけです。そうすると、どっちがぶつかったの? ということで、認識のズレがあったりするのです。例えば、前方から急ぎ足で反対方向を目指してきてる人がいて、その人が自分にぶつかったら、私は、その人がぶつかったとしか思えないわけですが、急いでいる人から見ると、私の方がぶつかったように見えます。なんで避けないのか、とまでは行きませんが、それに近い感覚で、ぶつかってきたのはそっちじゃん、もしくはお互い様でしょ、みたいに思ってることも多いようです。
 そこで、衝突&すれ違ったあと相手が謝るかもしれないと思い振り返ったり、もしくはこちらが 「あ、失礼」 と言おうと思い振り返ったときに目が合うと、人によっては 「コラ!」 とケンカを売ってるように取られることもあります。振り返り、相手が見てる事を確認してから一瞬で言葉を発するわけですが、一瞬なので、微妙な表情まで読み取れなかったりして誤解されて、かえってトラブルになる事も多いのです。相手が先述のようなこちらに対して悪い印象を持ってる場合、振り返って目が合ったりすると 「自分が悪いくせにこっちをにらんでる」 と誤解されてトラブルになったりしがちです。
 そうなると、自然と何も言わない人が増えてくる事も考えられますし、実際よほど派手にぶつかって痛い思いをしたのでない限り、たいした迷惑でも無く頭にもこないので、謝ってくれなくても気にならないからそのまま行ってしまうのもあるでしょう。あとは 「狭いんだから、いちいち文句を言わない」 みたいな暗黙の了解がうっすらとあるような気もします。
 だからといってぶつかっていいというわけではありませんが、心の中では、軽く肩がぶつかったとしても 「あら、失敗」 と思ってる感じですね。ただし、そのココロ 「よくない失敗をした」 程度で、MMORPG で言えば、NPC に対するような感覚になってしまうので、人相手なので、やっぱり言葉はかけたいものです。
 一方で少ないのは、狭いところに割り込んでくる人や、列を乱す人でしょう。これは考えてみると意外なのですが、ぶつかっても謝らないような人でも、整列乗車の列に割り込むような事をする人は少ないです(もちろんいますけどw)。こういう点は、日本の 「決められたことはちゃんと守る」 という現われだと思うので、とてもよいことだと思いますが、その一方で、ぶつかっても無言、というように禁止されておらず監視してる人がいない場合にはマナーを軽視する傾向があるということですから、二極化という意味である意味、怖いことではあります(まぁ、全体的に悪いよりは遥かにマシですがw)。
 さて、冷たい印象、ですが、これはやっぱり文化でしょうね。いい、悪いは別として…。確かに冷たく感じるかもしれませんが、一方で、他人の領域に触れないという、思いやりと考える事もできます。例えば、私は一日家にいる事が多く、一人暮らしをしてるわけですが、これをいちいち根掘り葉掘り聞き出されたり説明したりするのは嫌です。もちろん、やましい事をしてるわけではないので話すこと自体はかまわないのですが、知った事を元に何かアクションを起こしたくなるのが人間です。面白いこと、珍しい事を知れば他人に話したくなりますし、いろいろ邪推することもあるでしょう。そうなると、あらぬ噂を立てられたりといった、いわゆる 「ご近所」 世界が出来上がってしまいます。
 人それぞれあると思いますが、私は仲良くしたい人とは仲良くしたいけど、そうでない人とはどうでもいい(ゼロでいい)、というタイプです。だから、満遍なくご近所の人と付き合いを行いたいとは思わないですし、干渉されないことは喜んでいます。「余計な事を聞いちゃいけない」 と思ってくれているなら、それはそれで歓迎です。まぁ、これはネットゲームで本名の苗字ですら言うのを怖がる、またはそれを相手に訊いてはいけないような意識過剰な感覚を持ってる人がいるのと同じで、そういう意味では良くない事だと思っていますから、その加減というか、バランス感覚は重要だとは思いますけどね。
 実は、今のマンションを買う時、一戸建てにするか、マンションにするか、いろいろ検討してたわけですが、クローズアップされたのが、一戸建てを買った場合の町会の存在です。一戸建ての場合は、古くから住んでいる人も多く、体育会系の 「新入り」 状態になる可能性も低くはありません。その上、町会があり、掃除当番があり…というのは苦痛です。さらに、女性で、(家を買う平均よりは)若いのに一戸建てを買ってしかも一人で住んでて、と色々言われるでしょうし…。そのあたりを考えて、一戸建てはとりあえず今回はやめた、というのがあります。
 マンションなら、先に住んでるとか何年住んでるとかもないし、町会に似たマンションの管理組合は、公団でもない限りビジネスライクなものが多いらしいので住みやすいというのがあります。
 つまり、住んでる当人にとっては 「冷たく」 はなく、むしろありがたいのですが、逆に今までご近所とは付き合いをもって生活してきた人には、例えば私のような人が隣人だと 「冷たい」 と思うかもしれませんね。勿論、無視したり避けたりすることはありませんが、挨拶をする程度で、会話は無いでしょうから…。
 一方で、大きく異なる事例としては、私が US に住んでいた時は、濃いご近所づきあいがありました。最初はドーム(寮?)にいたのですが、その後一人暮らしを始めたわけで、その時はご近所さんとはみな友達でした。その背景には、やっぱり慣れない US 一人暮らし、助けてほしいという気持ちがあったのでしょう。
 左右誰も知らない人、ではさびしいし不安な物です。何があっても一人でやっていけるし、いざとなったら長年の友達も親もいる勝手知ったる東京と違って、アメリカでは知識も経験もなければ、身近に頼るべき相手もいません。借りたアパートについてる、日本では見慣れない電気設備や、支払いの方法、何かの手続き、慣習など、相談に乗ってくれるのはやっぱり、私の素性をある程度知っていて、信頼してくれてるご近所さんです。
 そうなると、不安心から自然とご近所さんとは仲良くしたくなり、人見知りがかなり激しい私が、ご近所さんづきあいネットワークに参加していました。ホームパーティーにはよく呼ばれるし、バーベキューにも連行されてましたw 上で書いてる、根掘り葉掘り訊かれたくない、わずらわしいという感想とは、全く逆でしょう?w
 さて、東京が住みやすい町かというと、私から見ると Yes です。これは、単に 「今自分が住んでるところだから」 という地元根性ではなくて、自分がそれ以外のところに住んだ場合を考えてみると、やはり難しいからです。例えば、東京以外の地に、土地や家が抽選で当たったとしても引っ越すことはしないでしょう。US 送りにでもされない限りw一生東京都内に住んでると思います。
 逆に、北海道から来ている人とかの話を聞くと 「東京に土地を買う気にはならない」 と何度も言われます。狭い割りに高いし、生活基盤を築く場所として魅力を感じない、ということらしいです。なので、北海道出身の人は賃貸率が高いですね。
 興味深いのは、外人さんのコメントです。帰国後、大学時代の友達やお世話になった先生なんかを東京に遊びに誘ってきてもらったりしたのですが、初東京の外人さんで東京が狭いという印象を持った人が少ないことです。広いとはいいませんが、狭いともいいません。「東京は狭いでしょう?」 みたいな事をたずねたら 「特にそうは思わない」 とした上で、逆に 「それを言ったら、日本の家は全部狭いでしょうw」 と言われた記憶があります。「緑が多い」 ということと 「ゆとりの空間がある」 ということに結構びっくりしてる人は多かったです。
 あと、個人の感想ですから、「東京は住みにくい」 という東京批判を書かれても私は別に不愉快ではありません。私は元々、自分の好きな俳優とかを友達なんかに 「あの人はキライ」 と言われてもいやな気分しない人ですし、むしろそれで嫌な気分になるのはよくないことだと思ってるほうですから。
 というわけで、ふにふにと書いてみました。