ろうほうじょうえい

 そういえば、ふと思ったことを一つ。私の職場と、よく聞く民間企業の皆さんの職場の決定的な違いが一つ。それは 「情報共有の取捨選択」 の度合いですね。皆さんは、お隣のブースや部屋の人が、何をしていて、どんな事を知ってるかご存知でしょうか。
 私の職場では、隣の人のお仕事は機密事項っていう事が普通にあります。下手すると、あの研究室では何を研究してるのかわからない、なんていうこともあります。たとえ同じ研究室でも、全員が同じ情報を共有してるとは限らず、アクセス権限や、取り扱い権限が異なっていたり、人決めうちで許可されていたりと、情報は結構限定されているのが普通です。だから 「同じ職場なんだから知ってるでしょ」 なんていう映画の世界とはちょっと違います。
 なので、うかつに 「なにやってるの?」とか「〜ってなに?」 みたいに首を突っ込むのも無言のうちにタブーとされています。もちろん、空気が冷たく張り詰めてるわけじゃなくて、余計な事を必要以上に聞く文化がないだけです。あまり聞くような人は 「なんで直接関係ないのに聞くの?」 と変な人に見られます。一つは 「お仕事でそれぞれ独立して機密があるのに、それを聞いてくるなんて、幼稚な人だなぁ」 と思われるか、もう一つは 「この人、怪しい人なんじゃない?」 と思われるかどちらかですね。
 PC や USB メモリなんかの規則はゆるいですし、ネットのアクセス制限もほとんどありません。けど、こういうところは厳しいです。情報漏えいや危なっかしい事も今までなく、きわめて平穏に、しかも快適に過ごせています。私から見ると、NotePC や PDA 使用禁止とか、ネット閲覧禁止とかの方法は、security 対策としては幼稚であるとしか思えません。ミーティングとか紙を印刷してやってたりすると想像すると笑えます。
 まぁ、そんなわけで、他とは違う情報保護方針。知らないものはもらしようがありませんし、アクセス権もしっかり区別されて管理されています。これは、シニア(上司)でも例外はなく、部下であるスタッフがアクセスできたり知りえる情報でも、シニアはその結果しか聞く事はできず、その情報そのものにはアクセスできなかったりして普通です*1
 ただこれは、いわゆる雑談としてお仕事の話をするのに 「スキル」 が必要になっちゃってちょっと面倒ではあります。この人にはどこまで話せるのか、この人はどうなのか、3人いるけど、どこで区切りをつけようか…などなど。なれないうちは結構大変かもしれません。
 ちなみに、文化として 「本当は機密だけど、どうせバレないだろうしちょっとくらいはなしちゃおう」 というのは、文化としてありません。共通認識として 「情報の取り扱いレベルすら守れない人は、技術以前にこの業界でやっていくのには幼稚」 と思われてしまうので、言った方も言われた方も、相当引きます。友達であっても、本来聞けるはずのない情報を聞いてしまったら、しかるべきところに報告をあげるでしょう、と言うくらい徹底しています。
 前に書いたお仕事の話じゃないですが、お尻を叩いて無理にお仕事をさせるのと、自分からお仕事をする気になる職場の違いと同じで、この辺も、NotePC を持ち出し禁止にしたり、USB メモリ禁止にしたりといった、目先で薄い方法で不便な制限をかける方法と、ある程度自由に行動でき、スタッフ各人の意識の問題で自動的に情報が守られる世界と、やっぱり違うんですよね…。共通するのは 「視点の近さ」であり、常に近くを見て単純な回避法しかしてない人にはわからないことかもしれません。
 この辺のマネジメント論は、私が書いた事は氷山の一角に過ぎず、全体を見るとうちの組織のマネジメント手法は、恐らく世界一に近いんじゃないかと思ってます。というか、この文化をきっちり作り上げた人たちを尊敬しますよ、ホント。

*1:権限で臨時に見る事は可能ですが、理由やらなにやらいろいろ面倒です