社長を出せの心理

 クレームとかで社長を出せ!とか上司を出せ!、なんていうのがマンガでよくありますが、実際にやってる人は普通にいるようです。でも、社長や上司に代わることって何かメリットがあるんでしょうか? むしろ、対応スキルが高くて返り討ちにあうかもしれない「上級者」をあえて呼ぶその心理はなんなんでしょう。
 まず違いとして上げられるのは、やっぱり「権限の違い」です。つまり、本来なら返金や慰謝料なんか出す権限がない、もしくは出してはいけないと社内規則があったりする人を相手にしてると、どう頑張っても何時間粘っても出ないものは出ません。ただ、悪質に粘ると、上司が出てきて、特例措置をとってくれることがあるのを、悪質なクレーマーは良く知っています。なので、最初からそうしてほしい、上司を出して私を特別扱いして!と、まぁ、そういう感じです。
 ただ、これは「そういうことがある」という事例なだけで、そうなると決まってるわけではありません。会社がきちんとした対応をする会社であればあるほど、そういう特別対応という、ごね得を生むような不平等な対応はしないはずです。つまり、しっかりした会社であれば、バイトくんから社長・会長までいう事はみんな同じ、対応は全部々はずなのです。
 もう一つは、責任の違いです。バイト君が暴言を吐いて、それが大問題になっても、社長さんは 「社員教育がなっておりませんで申し訳ございません」 と、トカゲの尻尾きりで、さも自分はそんな対応しませんよ?誠意を持って対応しますよ? みたいなフリをすることができます。裏を返すと、自分が世間から叩かれる対応をしてしまったときには 「会社の公式見解」 となってしまい、どうしようもありません。いいわけはできないわけです。
 なので、電話口でうかつな事ができないため、イメージ的に、こちらの言いなりになってくれそうな感じがするわけです。「お客様に対してそういうこと言うわけ?」 という定番の勘違いクンのセリフも、うかつな事ができない社長さんには、なおのこと有効です。イメージに限っていえば、お客さん側にどんな重大なミスと責任があっても、社長さんが対応した場合は「弊社にて誠意を持って対応いたします」的な感じになるでしょう。
 こうなるケースはあまりないため、もはや完全にイメージではありますが、上役を出す事に成功すると、上に行けば行くほど、無理と無茶が通用するような感じは確かにありますし、実際そうとしか思えません(日本企業の汚点です)。だから、きちんとルールを守る末端社員じゃなくて、柔軟性という名のルーズさを持つ上級社員の対応を希望するわがまま君は多いんでしょうね。
 実際問題としては、上級になればなるほど、ここの商品や詳細について知らないため、現場の社員ほど理論武装できず戦えないというのはあると思います。先述の通り、上になる=力量がある、スキルがある、と考える事もできますが、年功序列がいつになっても消えない日本企業の中では、上に行くほどオバカさんが増えている可能性も否定できません。実際、いろいろ話を聞くと、上に行けば行くほど、お客さん側のわがままが通用して話が終わっている事が多いようです。
 とはいっても、この話題は、あくまで 「本来、上役を出す事に何か意味があるか」 ですから、日本企業がどうとかはここではあまり関係ないのでここまでとします。上役を出す事は、本来 「意味のないこと」 でしかありませんし、そもそも 「上役を出せ」 と命令する権利はお客さん側にまったくありません。
 この辺も勘違いの典型ですが、service 内容や会社の経営は、あくまで会社が勝手に決める問題であり、お客さんは、そのサービスを任意で利用するだけの話です。何十年もの間、どんなにヘビーユーザーであろうと、口を出す権利はありません(感想を述べる権利はありますけどねw)。なので 「お客様のいうことが聞けないわけ?」 といわれたら、当然 「聞ける聞けないではなく、聞くいわれがない」 という事になるわけです。
 なので、当然、誰がお客さんと話すか、誰がクレーム処理をするかは、会社が勝手に決めること。「お客様が上司を出せといってるんだから、黙って出しなさい!」 と、まるで当然の権利であるかのように主張しちゃうタイプの人は、まず、その権利の根拠がまるでないことに気がついて反省する必要があります。はっきりいって、強気の意見を言ってるのに、根拠がそういう激しい勘違いだったりすると、かなり恥ずかしいですよ?
 次に、上司なら末端のことまで知っている(いないといけない)という勘違いです。これは、職務内容と職務責任と、職務権限を混同して勘違いしてるタイプです。部下の能力とできる事は、上司なら全てできると思っていませんか? 上司と、現場の部下というのは、職種が違うのです。上司は、管理するお仕事、部下は、現場で働くお仕事。確かに、上司は部下がやっていることに責任を負いますが、それは「結果としての責任」であって、実際に部下が現場でやっている、どういう技術で何をどうしているか、自分でできる義務はありません。担当してるお仕事が違うのです*1
 簡単な話ですが、バス会社の社長が、必ずしも自社のバスを運転できると思いますか?もちろん、運転=「定時運行、安全運転、笑顔で挨拶」です。できるとおもいますか? もちろん、できればそれはそれで部下の尊敬を集めますし、より信任が厚くなるでしょう。でも、それはあくまで社内の都合であって、そういう法的責任は当然ありません。そして、できないといけないと思いますか? 社長は社長のお仕事があり、現場のお仕事そのものがわかってる必要はないのです。町工場や個人商店とは違うのです。
 なので、上役に代わってもらい、あれこれ話をしても、詳細がわからなくなったりしがちです。ただ、ここで「わからない」と言ってはいけないという勘違いが、企業側にもあります。それはそのはず、企業の社員とはいえ、自分も消費者の一人でもあるわけで、勘違いは普通に持っている人が多いものです。わからないなんていったら、怒られる、と思うと、いえない、でも、わからない。そこでどうするかと言うと…
「わかりました。返金します(謝罪に伺いますなど)」
と言って、わからないことをつつかれる前に、対応を終わらせてしまったりするわけです。困ったものですね。
 飽きたのでこの辺でw

*1:だから、本来、上司が「偉い」わけじゃないんですけど、管理しやすいために、えらく威張れるようにイメージさせてる企業が多いだけです