クロエさん

 24 に出てくる 「つかえない」 と、ジャックにもシャペルにも言われてしまったクロエさんですが、彼女が最初に言われた理不尽なお叱り。「hogehoge のデータがない。何でアップロードしてないんだ」 といわれます。すると 「ちゃんとあなたのディレクトリにアップロードしました」 と答えます。つまり、お仕事はしていたんですね。でも、バウアーくんは 「は? funifuni ディレクトリに入れろ。一回でできないなら、他の人と代わりなさい(=クビ)」 なんてまだ怒るわけです。
 これ、一見クロエさんがディレクトリの入れ間違いをしてるのかと思いましたが、そうではなくて、会話をちゃんと聞いてみると 「ジャックは特別に指示はしていないので、いつもデータを入れることになってる場所に入れた」 わけです。つまり、クロエさんは別にミスはしていないわけです。この怒られ方は何なんでしょう?
 確かに、ドラマの中では、バウワーくんは麻薬をやっていて不機嫌でしたが、だからと言って、このやり取り自体は、実は(口調や、短絡的なクビは別として)それほどおかしなものでもないというか、ありえないことではないのです。
 成果主義とか結果主義なんていいますが、この中でたまに発生してるのが 「推測して行動せよ」 的な、エスパーみたいな行動です。つまり 「私が具体的に指示したかしないかは関係なく、私が満足するように仕事しなさい」 というわけです。私なんかは、上の例を見て 「別の場所を指示したわけじゃないのに、クロエさんが間違ってると怒るのは理不尽だ」 と思ってしまいますが、実のところ、ジャックから見れば 「口に出さなくても僕が思ってるところに自動的に入れてくれる人間が、使える人間だ」 という事なのです。
 つまり、ほんとにほんとの結果主義。どんなに実力があろうと、与えられた仕事を指示通りに忠実にこなせようと、結果として最終的に行き着く先で、思い通りにしてくれる人を望む傾向があります。大げさな話、ねっころがってテレビを見ていても、みたいであろうチャンネルを自動的に当てて切り替えてくれ、飽きたら自動的に消してくれるお手伝いさんが求められるわけです。
 私からすると 「私はこういうのが好きだから、それにしておいてほしい」 とか 「月曜日はこれを見るからちゃんと変更しておいてね」 ということくらいは、管理する側としては最低限やらないといけないと思ってしまいますが、US には意外とこの手の 「なにはともかく、何もいわないけどボクが満足するようにやってほしい」 的な事を言う人がいるんですよね。結構厄介です。こういう処遇をする人が、優秀な人材を無駄にしてる場面をよく目にします(だからといって、よそのセクションにまで口を出せませんからね…)。
 バウワーくんが今回のファイルだけどこに入れてほしいかなんて、いわれないとわかりません。でも、その、思い通りのところに入れておいてくれる人を 「優秀だ」 と判定してしまうわけです。他の技術力が優れていても、その能力も技術力と同等に判断材料にされてしまい、実にもったいないです。クロエさんも、あの後、いろいろみてると結構優秀な人なのがわかります。あの時首にしていたら、いったいどれだけ損失だったか…。
 まぁ、実際のところ、シビアに管理してない組織の場合、優秀な人が多少いなくなったところでゴリ押しで仕事は何とか回ってしまうので、その手の理不尽な首の飛ばし方も普通にできちゃったりするものですけどね。なので 「私は優秀だから首にはならない」 と思ったら、意外と簡単に飛んじゃうものなのです(へたするとクビにして万一お仕事が回らなくなったら、回せなかった人の現場の誰かのクビをまた切って、自分は他部署に雲隠れとか…)。
 私の力の及ぶ範囲では、そういう事は許されないようになっています。何か問題が起きた時に、明確な指示が出ていない場合は 「指示しなかった方が悪い」 という原則があります。つまり 「どこのディレクトリか」 を言わなかったバウワーくんの場合、もしこれが原因で重大な事件に発展しても、彼が悪いわけで、クロエさんはまったく問題になりません。というか、ありがちな 「言わなくてもわかると思った」 は言わなかった側にリスクが発生する選択肢です。
 ただ、他所の組織やセクションの一部では、やっぱり 「よきにはからえ」 で 「世は満足じゃ」 を期待する運営をしてるところもあったりしてなかなか厳しいです。管理職としてきちんと指示が出せないのは失格。他所に口出しはできませんが、無駄になる優秀な人材が惜しくてなりません。日本企業と違って、簡単に首にできるから発生する悪癖なのかな〜。