クレジットカード

 先日帰宅時に TAXI を利用したのですが、あいにくクレジットカードが使えなくてげんなりしました。使えるか最初に訊いたところ、その後運転手さんはクレジットカード取り扱いに対する不満(手数料を引かれることや、カードで払わなくてもいい現金を持てる生活をしようみたいな?)をいわれて、ガッカリさせられてしまいました。
 日本の文化で不思議な側面を持つクレジットカード。今回はこの機会に少しきつめに書いてみようと思います。ルカさんほどではありませんが、厳しさに挑戦です。
 金銭関連で一番私が日本で "ヘン" だと思うのが、クレジットカードに対する認識です。例えば、上の運転手さんの発言にもあるような 「このくらいの金額なら現金で払えないといけない」 のような考えがあることです。どうも、こういう考え方をする人たちは

  1. クレジットカードは現金がない人が使うものだ
  2. クレジットカードはお金がない人が払えないので仕方なく使うものだ
  3. 手持ちの現金を使ってしまうと困るから、カードで払うんだ
  4. 現金で払えるときは極力現金で払うものだ
  5. 転じて、クレジットカードを使う人は貧乏人

のような基本的固定観念があるように思えます。この手の人たちは、往々にしてそのほかの思考パターンも 「xxxをやらないのはできないからに決まってる」 という湾曲した思想を持ちがちな人である場合が多いようです。
 これらは、おそらくその昔一時期話題になっていた 「クレジットカード破産」 のようなものが頭にこびりついていて、そこから、カードを使って買い物をする人は金銭管理ができない貧乏人で、現金を使い果たしており 「お金がないからカードで無理して買ってる」 ので、そのうち支払いもできなくなって借金抱えて破綻するに決まっている、と思い込んでいる風味です。
 あれから何年もたっているというのに、いまだにこのイメージから抜けれない不思議な人というは、何も特殊な一部の人たちに限らず結構な数を占めていて、何かにつけて日本人と話をしてると 「え?カードで買うの? お金ないの?」 みたいな雰囲気に出会うことがあります。カードは、使える現金がない貧乏人が借金してまで買い物をするためのものだと思っているような、お金がないからカードを使うと思っているとは、社会の仕組みをもう少し勉強した方がよいと思われますw
 たとえば高めのドレスを買ってそれを着ていき、みんなに 「すごい、よく買ったね〜」 みたいに言われていたとしても、それを何かのきっかけで買ったのがカード払いだったことが知れると 「あぁ、なんだ、無理して買ったんだ」 みたいなイメージになることが多いようです。カード=背伸びして無理して買い物をする、というイメージが定着している、こんなヘンな国、日本くらいなものではないでしょうか。
 よく考えてみると 「クレジットカードって要は借金でしょ。よくないものだよ」 という人がいたりするのも思い出されます。まぁ、支払債務が残るという考えからすれば確かに借金かもしれませんが、そう考えてしまうと、たとえば文房具とか一カ月分オーダーしたものをまとめてよく月に請求される企業契約なんかみんな借金みたいなものです。お金がないからするホントの "借金"と、支払を効率的にするための "一括払い" の区別がつかない人は結構いるようです。
 私は、店頭での利用とネットショッピングに限り、クレジットカードを非常によく使います。というか、クレジットカードで払えるところは、ほぼすべてクレジットカードで支払いをします。100円とかではさすがになんか違和感があるので500円以上の場合が多いですが、手持ちの現金があるなしにはまったく関係なくカードを使って支払いをします。で、そんな私が貧乏人かどうか?は、私のことを知ってる人に訊けばよくわかるでしょう。
 なぜカードを使うか、というと、それは、第一に 「カードを使うことによりデメリットは何もない」 からです。単純に考えて、現金はお財布の中を使い果たしたら、ATM から reload しないといけませんし、足りるか足りないか考えないといけないので面倒です。カードなら Suica みたいにチャージするわけでもなく普通に使えます。
 もっとも、デメリットがないといっても年会費を取られる場合に限ってはそれがデメリットとなるので、私は年会費をとるカードは (ポイントや特典が豊富で、年会費分の元を充分回収できる場合を除いて) 作成しません。しかし年会費無料のカードであれば、なにかデメリットがあるのでしょうか?
 まぁ、個人情報意識過剰なアレルギー持ちの人は、どこで何にいくら使ったかカード会社に知られるのは怖い、気持ち悪い、とか言いだすのかもしれませんし、テレビの誇張されたワイドショーあたりでやってるような 「カード情報を盗まれ悪用されて身に覚えのない請求が!」 というのを真に受けてカードは怖いものだと思ってるような情報整理弱者の方とか、そういう人まで相手にしていられませんが(@@
 デメリットがない上に、ポイントがつき、何かもらえるのですから、使わない手がありません。といっても私は別に、マイルに移行させてどうするとポイントが有効に使えるといったようなテクニックを駆使しているような人とは違い、単純に自分が使っているメインのカードをおとなしく普通に申請しているだけですが、それでも何かがもらえるのですから、使わない理由がどのあたりなのか興味があるところです。
 まぁ、カードを使う人は貧乏人というワイドショー的な先入観にあえて賛同するなら、確かに貧乏人でしょう。なにしろ、貯まったポイントで何かが貰えるのを喜んでるわけですからw 私は年間ポイント交換で10万円くらいの VISA 商品券なんかを貰っていますが、確かにお金持ちなら 「たかだか10万円程度を "メリット" と考えるなんてさすが貧乏人」 と思うかもしれませんねw
 ポイントの云々を別にしても、単純に私みたいに家計簿の類をつけていない人間からすると、いつ、どこで、どのくらいの金額を使ったかをあとから省みることができるのは便利ですし、それによって、コレに使いすぎてるから、来月は少し控えようとか計画を立てることもできます。個人的には、家計簿は 1 円単位で詳細につける必要があると思っておらず、この程度の大まかな傾向をつかんで、自分の支出を調整できる材料になればそれでよいと思っているのでそれが自動的に作成されるクレジットカードはとても便利なものだと思います。
 また、送られてきた明細をみながら 「あ〜、先月の中ごろに大仙に行ったんだっけ。1ヶ月以上たってると思ったけど、大昔に感じるよ。あ〜、ホテル代がかなり安くてびっくりしたね〜」 なんて回想に浸るという副次的効果もありますw
 支払う時に 「カードで支払うのはカッコワルイから苦手。できるだけ現金で払う」「お金がないみたいではずかしい」 と思ってる人は、その根拠を良く考えてみるといいと思います。実際には何の根拠もないわけで、そう思い込んでいるばかり。カード破産した人を指して金銭管理や貧乏人呼ばわりする人がいますが、そういう人はたまたまカードで破産をしただけで、その手の人はカードがなくてもどちらにしろサラ金に手を出したり、お金がなくて路頭に迷うなり犯罪に手を染めるなりしているわけです。
 結果としてカードが破綻の最期だったからと、カードを使うのがそういう人だ、という発想になること自体、A ならば B であるのであれば B ならば A である、が成り立つ、逆もまた真なりが常に成立すると思っているちょっとお勉強の足りない人かと思われます。世の中には、カードが終着駅ではなかった 「破産した人」 はいくらでもいます。テレビの見すぎもほどほどにしましょうw
 むしろ、その手の先入観・偏見を強く持っていて公言している人ほど、実は、自分が実際にカードで買い物をしてみて、使いすぎてしまったり払えなくなりそうになったりした経験を持つ 「管理できない張本人」 だったりするのかもしれませんね。そういう発言をすればするほど 「私は金銭感覚がなっていない人です」 と言いふらしているようなものでちょっと恥ずかしいです(@@
 一方、店舗側にしてみるとクレジットカードが使えるということは運転手さんが文句を言っていたことよりメリットがあるわけです。一つは、クレジットカードが使えることにより、そこを使おうという人がいる可能性があるからです。特に、私みたいに中距離になると普段は現金でお買い物をする人でもカードを使って払おうと思う人が出始める金額です。
 確かに 「カードが使えないなら他のタクシーにしよう」 と、捕まえた taxi を断ってまでカードを使いたがる人はあまりいないかもしれませんが、カードが使える事が taxi の気軽な利用にもつながると思います。この辺は、特に店舗では顕著なわけで、私もよく 「カードが使えるからこのお店でご飯しよう」「ここはカードが使えないから高いものは食べたくない」 と思う事があります。重ねて書きますが 「高いものは払う能力がないからカードでも使えないと入れない」 じゃありませんよw コレ、カード批判をする人がよくする典型的な脳内変換ですが。
 デメリットは店舗側からすれば手数料。しかし、1% の手数料を払ったとして、私が 1 回乗ったら 10,000円くらいの売り上げになるわけですが、カードが使えなければ他所にいくとします。その場合、1万円の売り上げ損になるわけですが、それと、その日一日の売り上げが全部カードだったとして 1% の手数料、どちらが高いでしょう? もし手数料の方が高いのなら、その人は1日100万円以上売り上げている事になります。もちろん、コレは私一人だった場合。他にも同様の人がいれば、2 万円なら 200 万稼がないと手数料の方が高くならないので 「カードが使えることは損だ」 とは言えなくなります。
 私の利用したタクシーの運転手さんの売り上げを知る由もありませんが、彼が 1% の手数料を嫌ってクレジットカードの取り扱いをしない事が本当にメリットがあるのか、彼が目先の手数料だけを懸念して計算を誤っていのではないかが気になるところです。
 話を元に戻して、3万円程度の買い物をするときに 「あのお店カード使えるかなぁ」「カードが使えないならやめておこう」 という話をしたら 「3 万円くらい現金で払いなよ」 という意見が出る人は、カードを使うのは 3 万円現金で払えない (余裕がない) から仕方なく使うんだろうとか、現金がないけど商品が欲しいのでカードでしか買えない、現金で払うと困るからカードで払って買う、という意識の持ち主でしょう。3万円の品物をカードで買うのは、現金で買うのがつらいからではないのですよ?
 特に変な人ではなくても、この手の先入観・誤解を伴ったまま、現金を基本にして生活をしている人は結構いると思います。もちろん、支払い方法なんて利子をつけられたりするのでない限り何でもいいわけですから現金で買うことが悪いことだとは思いませんし、人それぞれだとは思いますが、少なくともカードに間違ったイメージを持っている人は、要するに単なる知識不足の 「ワイドショーみすぎ」 な偏見ですから、あまり大きい声でそれを言えば言うほど、無知を宣伝しているような結果になるのでちょっと考えた方がいいと思います。
 そうそう、カード関係を扱っている業界かどこかが 「クレジットカードは将来の自分の収入に対する借金なんだよ」 みたいなことを強調しており 「ないところからお金が出てくる打ち出の小づちではないのよ」 みたいな宣伝をしていたことがあったと思います。この辺は、周知不徹底のままでいると、説明責任あれこれの問題で訴えられると困るからというのがあると思うのですが、おかげでクレジットカード破産ブームが去ってからもこの手のネガティブな印象がすっかり根付いてしまっています。
 私の場合でいいますと、毎月支払いがくるクレジットカード、今月買ったものは来月か再来月支払いが来るわけですが、年俸制なので、来月か再来月に「将来の自分の収入」 なんてありませんw 今手元(や銀行口座)にある現金が、そのまま将来減るだけであり、たまたま年末にかかっている場合を除いて来月になったり再来月になってお金が補充されたものが引き落とされるわけじゃありません。
 つまり、ポイントさえくれて全支払い分の明細表を毎月まとめてくれるのであれば、資金が今すぐ引き落とされるデビットカードみたいなものでも何ら問題はないわけです。「今お金がない(今支払えない)からカードを使って今商品を手に入れる」 という、お金がないから借りるサラ金みたいなものだと思ったら、それは大きな間違いです。現金としてお金を使うたびに払うか、それとも1カ月でまとめて払うかの違い。
 電話料金や携帯電話の料金も、使ったものは1カ月に一度まとめて払うわけですから似たようなものです。携帯電話、通話してる途中であなたのお財布や銀行口座から現金がリアルタイムで実際に減って引き落とされているわけではありませんよね? 毎月一度、まとめて使った分だけ払う、同じことです。もちろん、携帯電話の使い過ぎで破産する人もいると思いますが、それは単に管理できないというだけの話で、携帯電話が悪いわけでもありませんし、携帯電話はリアルタイムでお金を払う公衆電話で通話ができない人が借金して通話するための道具ではありませんよね?w
 そもそも、カードで払うと月末に払えなくて破産というイメージを持っている人は、裏を返せば、手持ちの現金が実際に尽きて、物理的に支払いができなくなる「歯止め」を掛けてもらわないと自分の出納管理がちゃんとできていないという証拠です。こういう人がカードを使うと、確かに現金と違い歯止めがかからないので支払いができなくなり破産するかもしれません。
 そう考えると、カードで自己破産や借金というイメージをやらと強調する人は、なによりも自分自身が一番金銭感覚がなく自己管理できない人たちなのかもしれませんね。現金がお財布の中から消えたり、銀行口座から引き出す感覚を伴わないと、自分の消費量すら感覚としてつかめない、そんな人たちなのではないでしょうか。