上下関係?

 実力主義成果主義とは言いますが、同じセクション内で成果を出している順に上限関係があるわけではありません。これはあくまで評価(=報酬)に対するものであって、その人の「地位」を保証するものではないからです。なので、例え成果最低でもタイトルが上であれば上の人です。どんなにすばらしい成果を出してアワードを貰っていても、その成果が認められて上位タイトルがつかない限り、指揮命令系統上は発言権がありません。つまり、実力は成果の要素であり、成果は評価の要素でしかないわけです。その逆は成り立ちません。
 呼び方に関しては、前書いたとおり、上の人でもしたの人でもファーストネームです。ただし、公の場ではきちんと階級や称号つきで呼びます。タイトルでは呼びません。現場の人はいつも公みたいなものなのか、仲良し意外は階級で呼んでる人が多い気もしますがよくわかりません。
 現場の人で面白いカルチャーとしては、年功序列があることです。といっても、年齢ではなくて、在籍歴。前少し書きましたが、例え階級が上でも在籍歴が長い人には多少なりとも頭が上がらない側面があります。階級が上なのに、在籍歴が長い人に助言を貰ったりするのはよくあることですし、裏を返せば、現場の経験が長い人が、若く階級が上のオフィサーを一人前にするためによく言えばサポートする、悪く言えば鍛え上げるようなそんな側面もあるようです。
 現場の方なんか特に在籍歴が長いけど階級が上ではない人というのは意外といるわけで、そういう人の経験とノウハウは階級を超えた価値があるというわけです。もちろん、最終的な命令権、指揮権は上位の階級の人間にありますので、組織上命令拒否はできませんが、そこで強権発動したところで全部の部下がモチベーションを伴ってついてくるかは別物です。
 日本企業だと精神論が多いですし、うちらでも現場の方についてはご想像通り精神論が基本です。こういう場合、もちろん精神論。現場の方に限らず、こういう方面からの考え方では、うちら研究サイドでも同じように精神論なのは同じですが、つまりところ 「強制的に人を動かそうとしても本人がやる気にならなければいい成果は出ない」 ということです。士気はとても重要です。
 現場とうちらの違いは、現場では場合によりあくまでお尻を叩いてやる気を出させる風潮があるのに対して、うちらの場合にはあくまでやる気を出させるように環境づくりをしたり周りが気を使うところです。ちなみに、現場であっても、やる気が出る風潮作りというのは相当の予算と労力をかけて行われていますし、それをうちの組織のヨソのラボで真剣に研究しています。
 話がそれましたが、うちらはもちろんの事、現場では階級が上だからといって先任の方の意見を聞かず命令権を行使して強制的に動かすような事をすれば、場合によっては最終的には自分の身が危うい事になり、よい事はありません。また、いくら階級が上でも先任の方を見下したような態度をとると他のみんなからも嫌われてしまって最終的には上層部から評価されるときに 「部下を仲良くまとめて動かす事ができない」「雰囲気が悪い」 等で悪評を買う事になります。これは、うちらの話ではなく、現場でも同じ事です。
 現場というと何かと 「命令に絶対服従。仲良くする必要なし。ただ言う事を聞けばいい」 という印象がありますが、それでは組織として成り立ちません。もちろん命令には必ず従う必要がありますし、従わない場合には組織として処罰されます。余談ですが、例えば自分の判断が正しく、命令が間違っており、最終的には命令違反&独断専行したことが功績につながったとしても厳しく処罰されます。
 映画みたいに、命令違反して突っ走った部下が大成功を収めて無罪放免&ヒーローになった、というのは映画だけのお話です。よく映画でも 「これは命令だ」 というセリフを使う事がありますが、アレは何かというと 「推奨、ガイド、促進ではなく、拒否権のない命令だよ」 という事を明示的にするために使われています。裏を返せば、そうでない場合は上の人間に対してもリコメンドを出す事はいくらでもきるわけです。
 一旦命令とされたら、拒否できませんし、拒否した結果成功を収めても評価されず処罰されます。もちろん命令者に特殊な状態が認められる場合、例えば精神異常をきたした、能力の明らかな不足等が証明できればその限りではありません。しかし、事例はあるとしてもこれは実際にはかなり難しい事で、できないと思っておいたほうがよいです。そうしないと、自分が正しいと思い込んで、指揮命令者を無能と決め付けた部下が安易に暴走する事になり、組織として統制が取れなくなります。少なくとも現場ではそれは致命的なことになります。
 まぁ、命令する事は具体的なアクションについてであって、性能まではコントロールできません。右に曲がれとか、下から行け、という命令はでき、従わせる事ができますが 「xxxを製作せよ」 みたいなゴールを示されるような場合、日数がかかったりとか、雑だったりとかでうまく回るとは限りません。この辺は、部下との信頼、忠誠度の問題ですから、先述のような横柄な態度は取れませんし、先任の人をおろそかにしてるようでは、ノウハウも最大の支援も得られません。損するのはは最終的に自分です。
 現場ではあまり通用しない場合があるかもしれませんが、階級もタイトルも所詮組織の中の役割分担でしかありません。そういう考えがあるからこそ、絶対的な命令権や判断を行う権利を除けば、フラットであり、特にうちらの場合は誰もがファーストネームで呼び合う世界だともいえます。