Vista は不安定?

 新しい OS は何かと悪く言われ、特に日本では 「古い物が一番」 みたいな信仰がありますから、新しい OS に飛びつくより 「(旧版)〜の方がいいよ」 みたいな風潮が強いです。むしろ 「通こそ古い物を使うのよ」 みたいな勘違いが多く、たまにいわゆるヲタ系の人なんかで古い OS やコマンドラインを使って悦に入ってる姿を目にする事が出来ます。最近はだいぶ減りましたが、そういう人は、自己満足できるように Linux とかのサーバー OS を楽しくクライアント OS として使って満足されているようで何よりです。
 さて、そんな状態ですので Vista なんか当然のごとく 「XP で充分」「2000が一番」 なんていう声がちまたでは一般的。いつもの現象が起きているわけですが、こういうのを見るのも久々の気がします。企業なんかでは特にヒドイみたいですね。
 一般的に多いのは、新しいインターフェイスになじめない、覚えている操作と違うから便利に感じない、というだけの話。こういうのは、インターフェイスが単に方法が変わっただけであれば正しいといえますが、より (人間工学的に) 便利になっている場合には、慣れればより使いやすくなるのですから、それらを習得してより一歩先に進むのが正しいといえます。本当に不便なインターフェイスなのか、それとも慣れの問題なのかを判断しないといけません。
 そんな中、私もメイン PC や、今の持ち運び用 PC として定着している Type.G なんかでは Vista が入っています。確かに便利になった部分や使いやすい部分もありますが、全体的によくなったか、XP よりよいか…というと、実は 「疑問」 状態です。
 まず、安定性。一番ヒドイのが、メモリ管理のようです。特に究明したわけではありませんが、例えば InternetExplorer なんかで突如 「新窓を開く」 が出来なくなったりします。リンク先をクリックしても何も起らなかったり、グラフィックソフトで新しいレイヤが作成できなくなったりします。
 おそらく、Vista の内部でメモリをハンドルしている部分に何らかの問題があり、リソース不足が発生していると思われます。メモリは 4G 積んでいる上に、それほどたくさんのアプリを立ち上げているわけでもありません。少なくとも、メモリが 1G しかなかった XP のメイン PC の時には起らなかった現象です。
 これは、同じアプリを立ち上げればいつも必ず起るわけではなく、むしろしばらく使っていると起る、といった感じです。なので、メモリリークのような 「繰り返し長時間使っているとどんどん枯渇していく」 感じの動作ですね。それにしても、エラーも何も出ず、単に開けないだけ、というのは、リソース管理の問題もさることながら、リソース不足に陥っている、もしくは陥る可能性がある事を警告するダイヤログも何も出ない、リソースマネジメント上のユーザー告知義務みたいな管理もまるで出来ていない事になり、コレはソフトウェア開発の基本からするとかなり恥ずかしいマイナス点です。
 また、ハングアップ率も大幅に上昇しています。例えば、TMPegEnc なんかでは 100% 固まります。これは、フリーズするとか操作できなくなると言うわけではなくて、エンコードを開始すると 「アプリケーションから応答がないので強制終了します」 的なダイヤログが出て、強制終了する以外の選択肢がなくなります。
 当然ハングアップも何もしてないのですが、大きな負荷がかかるとハングアップと勘違いするのでしょうか。それにしても、30秒や 1 時間待つのではなく、アプリ画面はエンコードが順調に開始された(積算カウンタも普通に動いてる) のに、突然 「応答がなくなりましたので強制終了します」 と出るのは理解できません。「このまま応答復帰を待つ」 選択肢がないのも謎です。同様の事は、Becky! でクエリー検索をかけても発生します。
 他のアプリに関しても、このような突然死が起る事もありますが、単純に普通のハングアップ(応答なし)に陥る事もしばしばあります。しょっちゅうというほどではないにしろ、XP の時よりは格段に頻繁ですし、しかもそのほとんどが、複雑な操作やメモリを要求するような操作ではなく、それこそエクスプローラを開いたとか、値を入力しただけだったりします。
 また、これは不具合ではありませんが、OLE が守られていません。今までは Windows 内であれば、OLE などを介して大抵の物がアプリケーション間でデータをやりとりできました。例えば、IE の文字を選択して、それをドラッグして Google toolbar の検索欄に持って行き、検索をかける事も出来ます。また、その部分を秀丸にドラッグしてコピーしたりする事も出来ます。
 ところが、これは Vista に限った事ではありませんが、InternetExplorer 7 の「検索」 欄に同じ事をしようとすると、禁止マークになってしまってドロップする事が出来ません。Google toolbar にはできるのですが、MS 純正である 「検索」 部分にはドロップできないわけです。おそらく、この部分の作り方が、標準の手続きに乗っ取っていないのでしょう。サードパーティならいざ知らず、当の MS がこれはいただけません。
 元々、Windows OS のよいところは、操作の統一性、アプリケーション間通信の強力さです。後者は特によい点で、最悪でもクリップボード経由で何でもやりとりできるのは目立たないながらかなり便利で役立つ技術です。これが、クリップボードを直接経由しなくても 「相手が同じ種類のメディアならドラッグアンドドロップできる」 というのもまた Windows のよいところです。
 あまりそうさになじみがない方なら、実際に試してみてください。例えば http://www.google.co.jp/ ←この URL をなぞって選択し、その後いったんクリックを離してください。通常であれば、ここで CTRL+C を押してコピーしてから、アドレスバーに移動して、CTRL+V で貼り付けをするでしょう。しかし、そうではなくて、選択した部分をその上からクリックし、クリックしたまま、アドレスバーにドラッグしてください。アドレスバー上空にたどり着くと、「+」 の表示がマウスカーソルに付加されるはずです。これが 「今つかんでいるメディアをここに投下できますよ」 という目印です。アイコンと同じですね。
 当然、本文中の 「テキスト」 を、アドレスバーという「テキスト」を入れるためのボックスに持ってきたのですから、コモンインターフェイスとして放り込む事が出来るわけです。これが、Windows の 「普通の」 でも、「よく考えられている」 一面です。MS はプログラミング環境やコンポーネント類を共通化させる事で、サードパーティーのアプリケーションも自社のアプリケーションも、同じように文字なら文字オブジェクトで通信できるように努力したのは、縁の下の MS の戦略です。
 ところが、IE7 のあたりから、これが崩れ始めています。同じような事を、IE の 「検索」 部分にしようとすると、禁止マークになって放り込めないはずです。これは、アプリケーション間通信において、テキストを放り込める物だと認識させる共通の要素をきちんと持っていないため、OS が放り込む事が出来るオブジェクトだとは認識できていないからです。
 何があったのかわかりませんが…非常に MS らしくないミスです。たまに、自社開発言語の自社オブジェクトや Java みたいなものを使って共通性をなくしたサードパーティのアプリなんかでこういう事があり、やっぱり中小の作るアプリはこれだから、なんて思った物ですが、あれほど OLE についてがんばって守ってきた Windows の文化が、ここに来て乱れを見るとは思いませんでした。
 こういうきれいな統一を組めるところが、さすが MS の開発部隊だと思っていたのですが、質が低下したのでしょうか。他の事でも書いている Vista の品質の低さを見ると、どうしてもそう見ざるを得ません。統制がとれないで、コモンオブジェクトとして動作しないでも誰も指摘・確認できず、そのまま通ってしまうような状態なのでしょうか。そもそも、チェックもそうですが、そんな実装をしてしまう人が開発をするようになってしまったのでしょうか。
 一つには、アウトソースというか、北米のスタッフ以外の外部の会社に委託をしての開発・テストを行っている要因が強いのではないかと思います。直接的に批判するのは気が引けるのですが、アジアの某国の企業に10年くらい前からアウトソースっぽいことをしているので、それが影響してるような気がします…。
 さて、そのほかの Vista の問題ですが、ワイヤレスがつながらない事が多くなりました。SSID を隠している AP には自動的につながらず、毎回 SSID と WEP KEY を手動入力して、新規の AP として登録してあげないとつながらないです。少なくとも、家にある VAIO T とか、U、S はすべて、再起動した後自動的につながっています。しかし、VAIO G は、毎回毎回、SSID と WEP KEY を手動入力してつなげてあげる必要がある状態です。
 といっても、これがすべての 「Vista の」 環境で起きているかというとそうでもなく、高確率でつながる場合もあるようです。また、WEP を間違えても SSID さえあっていれば、その新規の接続は失敗する物の、既存の登録されてるなかから見つけてつなげてくれる事もあります。挙動不審です。これは、ドライバが絡んでる可能性もなきにしもあらずですが、類似の事例は Web 検索すると山ほど出てくるので、おそらく環境依存性は低いと思います。
 このワイヤレスの問題は、Vista そのものは 「グレー」 ですが、表示が遅い問題は、明らかに Vista の不具合です。どういう現象かというと、例えばマイコンピュータを含め、エクスプローラを使ってフォルダを開いた時に、中が表示されるまでかなり時間がかかる場合がある事です。例えば、マイコンピュータを開くと、中身が真っ白の状態でウィンドーが立ち上がります。1分くらいすると、やっと中身が出てきたりするような状態です。これは、個別のフォルダでもよく発生します。下手するとハングアップもします。
 XP の場合、このような事は全くと言っていいほど起っていません。サクサクひらきます。特別な処理をするような動作でもないはずなのに、なぜフォルダを開くだけでこんなに時間を食うのでしょう。明らかに、ベータ、もしくは RC ビルドレベルです。全体的に、動きが遅いというより 「すぐ引っかかる」 という感じでしょうか。それほどfile数が多くないフォルダを開いたのに、青い輪がぐるぐるになるのは理解できません。
 そのほか、ファイルをコピーする時に 「残り時間を計算しています」 が、実際にfileをコピーするのにかかる時間と同じくらい、表示されていたりします。エクスプローラの動作は、全体的に遅いとか早い問題ではなく、挙動が不安定です。
 これらの意見は、私がネット上で目にすると 「どうせ、XP からアップグレードしたり、古いスペックの低い PC で無理に使ってるからじゃないの?」 なんて思ったりする事もありますが、少なくとも私が今現状経験しているのは、今年の夏まで最速の CPU だったQuad Core Xeon の Dual CPU 環境で、メモリは 4G、ビデオカードGeForce 8800 搭載のトップクラスの物です。この環境で安定しなければ、他どの環境で安定するというのでしょう?w また、再現性という面では、同じ現象すべてが、VAIO Type.G (1.2GHz Core2 Duo CPU/ 2GByte メモリ) で起っています。
 そんなわけで、Vista は不安定かと聞かれると…残念ながら、現状では Yes と言わざるを得ません。XP にダウングレードしてインストールするべきかというと、そうではありませんが、新しい OS で快適に使えるかというと NO です。そして、それらがどの程度改善されるかについては、先ほどの OLE のお話でもあるとおり、MS 内部の開発力と統率力に大きな疑問を抱かせる現象が起きている事を考えると、この先どうなるか全く予想が出来ません。
 通常なら 「そのうちパッチで直っていくからよくなるよ」 と思うのですが、根幹から会社の技術力に疑問を抱かせる 「初心者みたいな」 ミスを MS 本体がしている事を考えると、残念ながら直ると信じる事は難しいです。大げさに言えば、これは、MS の時代が終焉を終えて、PC9801 みたいにシェアを急速に奪われて姿を消す始まりだと考えても、もしそれが現実になった場合、振り返ってみれば 「あぁ、やっぱりその前兆はあったよね」 と思えると言っても大げさではないでしょう。
 今年のファーストハーフまでは、MS が衰えるなんて考えられないと思っていましたが、、この現状を考えると、あり得ない話じゃなくなってきてるなぁ、と思うのでした。単なるバグやミスではなく、WindowsWindows らしさをになってきた根幹に関わる部分を「うっかり」してるわけですから 「別人」 みたいなものです。