あまくだる

 天下りというと、また、なんか暗いいまいちな感じがします。私もニュースなんかで話を聞く度に 「う〜ん、イマイチ感たっぷり」 と思うのでした。なんかこう、都合のいい人達だけで都合良く進めている、陰湿で閉鎖的なイメージがあります。イマイチ感漂います。
 ところで、そもそも何で 「天下り」 ってよくないんでしょう。確かに、お国のお役所が、退職者を縁故のある企業に優先的(というか独占的)に就職させ、ある程度のポジションに着かせるというのは不公平なイメージがあります。普通の人から見たら 「定年になっても行き先があるなんていいよね〜」 なんて思うわけです。
 また、その人が行く事により、その企業が国のいいなりになる一方で、その人が行ってる事でこれまた優先的(ともすれば独占的)に国からの発注を受けるようになったりする場合があり、これは確かに、公正に行われるべき企業への発注に関して 「コネ」 で不公平に請け負う事になり、ともすれば高額に発注されたり質が悪いのに仕事が来るような事もあるかも知れません。
 けど、プラスに考えてみると、天下りの形態によっては全く問題が無いどころか、良いと思う面もある気がします。例えば、確かに定年退職した職員が自動的に関連企業に再就職できるのはズルイと思う気持ちもわかります。けど、それは果たして問題行動なのかというとちょっと疑問です。もちろん、受け入れ先企業に受け入れ圧力があったりしたらそれはそれで問題ですが、就職先が紹介され再就職できるのは、高齢者の雇用促進という意味でも、甘く考えれば福利厚生という意味でも良い事の気がします。
 しかも、天下り先は民間企業。誰を雇おうと、どんな基準で雇おうと原則自由です。家族経営やお友達役員と同じように、知り合いから頼まれるからこの人を雇用するなんていうのはよくあるお話です。本当に公平を求めるなら、確かに全員に等しくチャンスを与えるべきですが、その 「義務」 があるかというとそうではないわけです。企業の自由意志ですね。
 しかも、これまで取引をしていたため、フローなどのノウハウもあるし、経験もあります。もちろん、場合によっては知ってるからこそ勤められないという場合もあるとは思いますが、そういう特別な場合を除いて基本は問題ないどころか、お仕事がスムーズに行きます。例えば、今まで漁をしていた漁師さんが、体力が落ちて漁に出れないからとお魚屋さんに就職すれば、お魚の見分け方とか種類の知識とか何かこう、既に役に立つスキルもありますし、仕入れのノウハウなどもわかっているので、お仕事がスムーズに行くでしょう。
 まぁ、そういう恩恵がなかったとしても、今までのお仕事が続けられなくなった人に、より簡単なお仕事や似たような負荷や責任の低い紹介するのは悪い事だとは思いません。本来なら、ある程度歳を取ってしまって今のお仕事が出来ないと思ったら、組織内で異動させて、より簡単なお仕事をしてもらったりして、雇用を続けるのが理想的です。けど、例えば、そういったコアから外れたお仕事は、外部にアウトソースしてしまってる場合があるので、組織内にそういうポジションはない。なので、それをアウトソースしてる先に転職して働いてもらう、というのは悪い事なのか、微妙です。
 例えば、私が今の職場で、もう歳を取って頭が回らなくなり、活躍できなくなったとして、それでも、まだ何らかの働く意志がある場合、より簡単な雑用係みたいな事でもいいから働きたいと思うわけです。もちろん、コンビニのレジとかどこかでバイトしてもいいのかもしれませんが、それよりは勝手知ったる職場で、知った人とも顔を合わせつつ働きたいと思うのはあることです。
 そうなった時に、例えば、施設内をお掃除するようなお仕事や資料の整理をするお仕事があったとします。そこに異動させてもらえば、お仕事の高度さが下がる分、報酬は下がり、権限もなくなりますが、働き続けられます。けど、実際にはそういうお仕事は、直接ではなく、外部の組織や関連会社にアウトソースしてしまったりする事が多いわけです。そうなると、その会社に紹介して転職してもらい、お掃除をしてもらう、というのはある意味自然な流れに見えます。いちいちバイトの面接をして回る必要もなく、私の人柄と適正を知ってる人から 「この人ならいいよ」 と推薦してもらい就職する方がずっと楽です。
 「楽」なんていうと、すぐ「楽をするなんてけしからん(ズルイ)」なんていう人がいますが、楽をする事は犯罪でも悪い事でも何でもありません。それを悪い事だと思うのは日本人の好きな精神論重視の愚民思想に他なりません。苦労せず、歳を取っても働き続けられる(可能性が高い)というのはとても良い事だと思いますが…。
 まぁ、外部一般に門戸を開いて、この 「お仕事」 を一般公募して一般の人にも就職のチャンスを与えるべき、という気持ちもわからないでもありませんが、民間企業である以上どこから採用しようと(本来は)自由なのは先ほど書いたとおりです。頼む側も自分のところの職員が引き続き仕事が出来て生活に不安がない環境を提供するのはいい事ですし、相手側にしても信頼できる所から、確かな背景の人間が雇えるわけですから、どちらにとっても良い事ばかりです。その会社に発注する以上、自分の組織の退職者が来るわけですから、変な人間を送り込まれる心配もなく、信頼も出来ますしね。