アメリカのスーパー事情

 以前話題に出た量り売りです。最近身近で話題が出たので、ちょっと書いてみることにしました。量り売りは必要な分だけを買うので、お買い得感がある…っていうか、そもそもアメリカだとお野菜が安いんですよ。普通に日本の半額だったりします。なので、アメリカから来たスタッフは 「日本野菜高いよ」 というのが定番の不平不満ですね。
 量り売りシステムですが、これはレジのシステム自体が違うので多少難しい部分があります。日本でもレジにはバーコードセンサーがあって、その上を通過して商品のお値段が自動加算されていくわけですが、アメリカのレジはその台の部分が同時に計りになっているんです。この上に量り売りの商品を置いて、店員さんがその商品の種類を打ち込むと、その商品の重さあたりの単価が呼び出されてそれにはかりの重さがかけられて加算される、というシステムです。
 日本の量り売りは、基本的に、量り売り対象の商品の横に秤が置いてあって、お客さんが自分で袋などの指定された入れ物に買いたいだけ入れてからその秤に載せてボタンを押すと、それ応じた金額が表示されたシールが出てくるので、それを袋に貼る…というような感じですね。お魚なんかでは、袋に入れて自己申告で 「サンマ5匹です」 とかいいますね。魚を US で量り売りで買ったことはありませんが、野菜に関しては 「ハダカ」 でレジまでもっていき、そこで計量して値段が決定されるのがアメリカ式です。
 ところで問題なのが、アメリカのスーパーの野菜売り場は、日本と違って、ものすごくいろんな種類のお野菜が売っています。これは、いろいろな食文化の国の人がいるのでそのニーズにこたえてる感じがありますね。でも、私の住んでいた地域のスーパーには、どこも最期までシイタケがおいてありませんでしたが…。
 で、ここから予想できるように、似たようなお野菜がいっぱいあるのです。しかも、量り売りです。つまり、お野菜を包装してる物も縛ってあるテープもないから、当然バーコードもなければ品名も書かれていないのです。その上、かなり種類がある。こうなると、店員さんも、お野菜の名前を全部なんて覚えておらず、かつ見分けがつかない事がしょっちゅうです。ニラとワケギと万能ねぎの区別が付きにくいようなものです。おまけに、あまり覚えようとする努力のない店員さんまでいたりします。なので、よく逆に 「これは何?」 なんて訊かれたりしますw
 この時に自分で野菜の名前を覚えていないと、結構厄介です。当然、その野菜によって単価が違うので他の店員さんに 「ねぇ、これなんだと思う?」 みたいに訊いたりして 「さぁ?」 みたいな談義が始まってしまいます。挙句のはて 「たぶん、スクワッシュね」 と適当に決められてしまったりします。これで、結構渋滞ができてしまうので気まずいのです。留学したてで、しかも見慣れない野菜の見慣れない名前なんて早々覚えられず、苦労したこともありました。
 量り売りシステムの便利なところは、やっぱり一人暮らしとしては必要な量だけ買えるということです。品質劣化の激しいバナナを考えてもらえば分かりますが、バナナ好きでもない限りひとふさ全部買って、黒くならないうちに全部食べるのは結構難しいです。それ以前に、その時バナナを食べたくて買っても、次の日もまだ残りのバナナを食べたいかどうかなんて分かりません。それでも一房まとめて全部買わせる事による 「1本ではなくて10本売れた!」 という押し付け的売り上げが見込めるというメリットと、ひとふさ全部は食べれないや…と思って、全く買わない人がいるデメリット、どっちが多いのかはなぞです。
 なので、今夜バナナ食べながら映画でも見よう、というときは1-2本だけちぎって持っていけばいいわけです。「本数」 ではなくて重さなので、大きいのを選ぶと得だというメリットはないですけどね(本数で売ってることもあります)。あともう一つのメリットは 「おいしそうなところを好きに持っていける」 っていうことです。変色していたり形が悪いものは選ばずに好みの部分をえり好みできます。例え 5 本ほしい時でも、好みの色形のものだけ 5本持って行けます(そういうことする人は少ないですが)。
 ここまでは、一応システムと需要さえあれば、日本でも実現しそうなのですが、これで厳しいのは、より色形にこだわる、ある意味神経質な日本人の場合 「良いものだけがどんどんなくなっていって、少しでも傷があるものは売れ残ってしまい、腐るだけ」 という羽目になることです。つまり、ロスが多くなることによる単価の上昇ですね。傷のあるものはディスカウントしてあとで売りに出してもいいんでしょうが、そうするとそれだけ手間もかかるというものです。しかも、日本のスーパーでは、傷があるものはどんなに値段を下げても、なかなか売れないらしいです。
 また、日本では実現がかなり困難なものもあります。それは、この量り売りと並ぶ見慣れないシステム、勝手に現物試食システムです。さすがにバナナは無理ですが、ぶどうとか、さくらんぼとかの小物の場合、勝手に一つとって食べてしまって OK という慣習があります*1。日本では試食用のものが別に用意されていたりしますが、それだと自分の選んだ房がおいしいかどうかなんて分かりません。買って帰ったところ、すっぱくてイマイチだったということもあります。その房から味見すれば、ほぼ確実ですよね?(稀に例外ありw)
 というわけで、置いてあるブドウとかから粒がぽつぽつとなくなってる跡を見る事ができますが、これは勝手に味見してしまってるのです。こうなると、やっぱり神経質な日本人の事、他人が触ったり試食したようなのはそうそう買う気にはならないものです。特に、リンゴやナシのように硬くて簡単に丸洗いできるのならまだしも、ぶどうのようなやらかいものは、ひと粒ひと粒を洗うわけにも行かないので人がベタベタ触ったものって、ちょっと抵抗が…。
 ところで、量り売りって、ぶどう一粒でも Ok なの? と思うかもしれません。これは、少なくとも私が常用してるスーパーでは OK でした。ただ、重さが 2g とかですからね…。OK かどうかということと、それをすると変な人だと思われることとはまた別なわけですから気をつけないといけません。日本のスーパーではビニール袋を好きなだけもらえるよ、といわれて、ビニール袋を山のようにもって帰ったら白い目で見られるのと同じですね。
 ちなみに、そうやって、味見もして、自分のほしい物を、ほしいだけ買っていくシステムですが、気をつけないといけない事もあります。それは、商品を傷つけないというマナーです。例えば日本ではよく、生肉コーナーのパックのお肉を指で押していくオバサンとかがいたりしますが、自分が買わない商品を変形させてはいけないという暗黙のルールがあります。感覚の違いですが、自由に選べるからといって、やっていいこととだめな事が、想像と違った形で分かれてる事が多いので、注意が必要です。
 そういう意味では、日本においてリテラシーの低い地域で量り売りをやると、商品をだめにされて、だめになった商品ばかり置いてある量り売りは誰も買わない、という状態になり、即廃止になるのは目に見えています。
 さて、量り売りが実際にされてる事、そういうシステムの中で買い物をすることは、要は 「習慣」 でしかないわけですが、その習慣は何も量り売りのコーナーだけに発揮されてるわけではないのです。例えば、量り売りができないドリンクとか、袋詰めされてるシリアルとか。そういうものも 「単位あたりの価格」 が記載されています。つまり、買うのは袋単位でも、感覚として量り売りと同じように 「一定量での価格」 を意識できるようになってるわけです。
 しかも、親切なことに、結構色々な単位でかかれていたりします(ドリンクなんかの場合は重さじゃなくて、体積でかかれてます)。日本でも 「100g当たりn円」 とかかかれてる事もありますが、これがほぼ全てのパッケージに印刷されてしまっているところがなかなかです。なので、パックの大きさが違う商品でも、値段の比較も簡単です。感覚が量り売り基本で意識している部分が、それが浸透する原因かもしれません。
 ところで余談ですが、アメリカのスーパーの良い点。それは、スムーズさです。いえ、手際が悪くて渋滞が出来る事があるのにはあるのですが、日本のそれよりよくできています。まず、一人暮らしにうれしいのは express lane があること。15個以下の品物の人優先とか、5個以下の人優先とかのレジがあったりするので、シリアル1個だけを買うのに、50個近いものを買う人のあとにボケーッと待っていないといけない、ということがあまりないです。
 もう一つは、レジシステム。ベルトコンベアでどんどん商品を処理していきます。日本だと、レジを通した品物は、再びカゴに入れられていく事が多いですが、スキャンされた商品はベルトコンベアで片っ端からどんどん先に流れていきます。
 で、そのベルトコンベアの先には何があるかというと、荷物を袋詰めにしてくれる専門の人がいます。この人の事を 「サッカー」 といいます。日本だと、空のレジ袋を渡されて 「自分でつめてね」 と重いカゴを台にもっていきせっせと自分で入れないといけませんが、アメリカのスーパーでは、お金を支払ったら、袋ごと受け取って出て行けばいいです。つまり、レジは常に二人体制なんですね。
 これ、すごく好き。しかも、その人の好みによって、日本のようなビニールのレジ袋か、それとも紙袋にするか、選ぶ事ができます。日本で買い物をすると、袋詰めをするのが面倒で面倒で…。しかも、サッカーさんは手馴れているので、テトリスのように上手に袋詰めをしてくれます。もちろん、壊れたり潰れやすいものは別にしてくれたり、上の段に入れてくれたりと、抜かりありません。
 このサッカーさんは、結構 (USにおける) 外人さんがやっていたりしますね。移民の子とか…。英語を話さなくてすむし、単純作業なので、教育程度が高くなくてもできるらしく、minority の人が担当してる事が多いです。日本人もたまにいますが、日本人かな、と思っても大抵はチャイニーズです。
 信号のシステムも含めて、日本もこういう効率的に物事をこな巣システムは、見習って欲しい点は、結構多いです。勿論、だめなシステムも多いですがw
 以上、アメリカのスーパーの小話でした。

*1:これに関しては、黙認なのか本当にOKなのか、ちょっと怪しいです(^^;