職業差別?

 テレビでちょっとやっていた話題。何かというと 「契約社員やアルバイト社員など、雇用形態によって労働者を差別するのは、不当だ」 という内容です。まぁ、この「不当」というのは、法的になのか、それとも倫理的になのかはイマイチごちゃ混ぜの論法だたのでわかりませんが、とりあえず「差別するのはおかしい」という主張でした。
 さて、これ、本当に差別なんでしょうか? 私はイマイチ納得できません。そもそも、派遣社員やアルバイトというのは、雇用する理由、目的が違ったりしますよね。正社員と差別する、と言われますが、生まれながらにして決まっている性別や人種を差別するのとは違い、目的が違うのだから、差別ではなくて、普通に区別ではないでしょうか。
 私は何度か 「差別じゃなくて、区別」 という言い方は、差別をする側の人間が都合良くごまかすために使う常套文句だよね〜、なんて書いてますが、この場合は、明らかに区別。そもそも、区別があるから雇うのであって、もし区別できないのなら、雇わないのではないでしょうか。
 実際には、社員と契約社員派遣社員など区別泣く、同じ職場で同じように働いている人がいて、一見しただけじゃわからなかったりします。もちろん、そういう雇用形態・職場環境もありでしょう。裏を返せば(当然違法行為を除いて)どのように使うかは、雇用した側の自由だからです。社員と全く同じ使い方をするのも OK でしょう。ただし、そういう場合は 「それなら雇用の安定のために正社員にしなさい」 というのがお国の見解なので、あまりいい事ではないのかも知れませんけどね。
 さて、そもそも派遣社員やアルバイトさん、何で雇うのでしょう。一つは、期間。日本の場合、なんだかんだ言って、やっぱりある程度同じ仕事を続けた方がいい、という価値観があります。なので、社員になる=ある程度は居るというイメージがあります。逆に、会社から見たら、悪い言い方をすれば 「いつまでも居座られる」 可能性もあります。日本の法律では、そう簡単に首を切れません。そのため、社員を採用する時はある程度時間や手間をかけて、雇用を調整するのが一般の会社でしょう。今はだいぶ薄らいだとはいえ、終身雇用の時代は、それこそ双方にとって 「一生の買い物」 だったわけですし。
 一方で、それでは困る場合もあります。一つは、単純な話し、駅前でチラシを配ってくれるだけの人を社員で雇って抱えておくのはやっぱり面倒です。いつまで持ちらし配りをするかどうかわからないし、定期的にお仕事がある訳じゃないし。そうなると、必要な時だけアルバイトを雇って、一時的に利用して、その後、さようならする、というのが効率的です。
 これはもちろん、有期雇用契約派遣さんでも可能でしょう。実際、例えば、イベント会場のコンパニオンさんなんかは、派遣さんだったりします。ただ、派遣の場合、アルバイトを直接手軽に雇うのとは違い、派遣会社との契約や交渉など、ちょっと手間がかかりますし、途中に一枚噛んでる以上、コストもかかります。そのかわり、どこの誰ともわからないアルバイトよりは、ある程度は派遣会社が責任を持ってくれるので、手堅い人材が使えるわけです。
 特に、コンパニオンみたいにある程度の教育とスキルが必要な場合、アルバイトなら、面接して、試験をして、本当に大丈夫か自分たちで確認しないといけません。当然、それには、コンパニオンとしての素養をきちんと見る事のできる人材が会社にいないといけません。手間も時間もかかります。派遣会社にお願いすれば、その辺はパスした人だけを貸して貰えるので便利です。
 一方で、コンビニのレジみたいなのは、それほど高度なスキルが必要なわけでもなく、自分たちで簡単に面接をして雇ってみれば充分だったりします。派遣会社から訓練された人を紹介して貰う必要はあまりないでしょう。けど、家電製品の販売や自動車など、ある程度の知識や経験、マナーが求められる場合では、派遣社員がよかったりするかも知れません。
 いずれにしても短期的な需要だったり、いつ終わるかわからない内容の場合は、派遣さんやアルバイトさんにお願いする、というのは、明らかな「使い方」のシステムの一部であって、これを否定する事は、そもそも派遣さんやアルバイトさんの存在意義すら失ってしまいます。
 それなら、社員にすればいいじゃん?と思う人もいるようですが、社員にするというのはそれなりに会社側もコストがかかります。実は、支払っている額は、社員さんより派遣会社経由で派遣社員に払うコストの方が高い場合もあるのです。でも、単純なコストの問題ではなくて、その人を「身内」にしてしまうことの責任とリスクを考えた時に、その必要が必ずしもあるとは限りません。
 これは、企業側もそうですし、派遣社員の側も同じです。別に、企業側の都合だけで「一時的な仕事だから」とか「手伝ってもらうだけだから」という理由で成り立ってるわけじゃなくて、派遣の側も 「派遣先の会社がどうなる当時分は生き残れる」 とか 「社員としての責任を取らなくていい」 「契約満了してまた違う所で働きたい」 なんていうのもあります。
 さて、社員にすればいい、と思った方は、身近な例を考えてみるといいかもしれません。自分が、小さなお店を開いたとします。自分一人で経営する、小さなお店ですが、少しも受かってきたのでお店を広げて、忙しくなりました。その時、どうしますか? 社員として、誰かを雇いますか? その人に、ボーナスや退職金、社会保障などなど、一人前の社員としてのサポートをつけて、手間をかけてまで雇いたいと思いますか?
 当然雇ってしまったら、簡単な理由では首に出来ません。もしお店が儲からなくなって、3人を2人に減らそうにも、首を切るのがなかなか難しいのです。アルバイトなら、一方的な都合で契約終了が可能ですが、社員の場合、もしクビにするとなると、その前に経営改善努力として、経営層・役員(自分)のお給料を減らして努力したかなどの明確な根拠を求められるなど、とても厄介です。それをいちいちしたいと思いますか?
 社員にするということは、経営に口を出せなかったとしても、身内にする事です。一緒にお店をやっていくという事です。確かに、そうすれば、働く側も親身になって働いてくれるかもしれません。自分のお店だからと、売り上げが上がるように黙っていてもいろいろ考えて動いてくれるかも知れません。けど、その分オーナーには手間も責任も重くのしかかるわけです。
 それを考えたら、アルバイトで必要なだけ手伝ってもらえばいい、と考えるのが多いのではないでしょうか。貴方のお店が、忙しくて手伝ってもらいたい、というだけで、正社員を雇う気がしますか? これは、普通の企業でも同じで、身内になって一生懸命やって欲しい人もいる一方で、お手伝いさんも必要なのです。それが、いろいろな側面をもって成り立っている、企業です。
 働く側にも、先述のようにいろいろな働き方の要望があります。社員だからと拘束されるのは嫌で、アルバイトだけで一生生きていきたい人もいるでしょう。専門的なスキルが必要な部分を、短期集中型であちこちの現場で活躍したい人もいるでしょう。方向性や戦略を決める社員みたいな仕事はしたくなくて、いわゆる実作業だけを淡々としたい、という人もいるでしょう。
 私も、技術やさんとしてお仕事をしつつ、管理職的お仕事も師筒でいろいろなのですが、その中で、組織的な運営方法みたいな物とかにも色々やらないといけなかったりする事があり、人によっては面倒だと思うのもわかります。それらを考慮して、どういう働き方をしたいかで、雇用区分が変ってくるんじゃないでしょうか。
 社員と同じにしろ、と叫ぶのは結構ですが、その分、責任や義務も増加するわけで、そうなると、望んでいた、派遣社員としての働き方なんかが出来なくなる可能性もあります。権利を叫べば必ず義務がついてくる物。都合のいい所だけいいとこ取りなんて出来ないのが世の中です。
 ふと、かいま見えたインタビューシーンでの発言ですが、何人かの人は、派遣社員になりたくてなったわけじゃなくて、能力が足りなくて、派遣会社に登録して働くのがやっとだった、というような人が混じってるようです。望んでなったのではなくて、自らの能力不足の結果だったのなら、社員と同じにしろと我儘いうのもわかる気がします。
 本当は社員になりたいのに、なれなかった、だから、無料で乗り換えアップブレードしたい、という事なんでしょう。そんな考えじゃ、社員として雇うに値しないという事に本人がまず、気がつかないと、明るい正社員の道は開けてこないでしょうね。もちろん、正社員になることが、上位の生活ではありませんから、あくまで「そう思う人の」道の話しでしかありませんが。
 お仕事のスタイルによって棲み分けをしてるのを本当に崩したいですか?